競技ダンスの世界で、スタンダードのリード&フォローは時折論争が巻き起こる重要な要素です。この技術は、ダンスカップルの息の合った動きを生み出す鍵となり、その奥深さは多くのダンサーを魅了し続けています。また、カップルの喧嘩の原因のほとんどがこの「リード&フォロー」なのではないか、問う認識もあります。
本記事では、スタンダードのリード&フォローの基本的な仕組みから、上級者が直面する課題まで、幅広く探っていきます。
リード&フォローの基本的な流れ
リード&フォローの基本的な流れは、以下のようになります:
- 男性がタイミングと方向を決定
- 女性がそれを察知し、移動可能な距離を伝達
- 男性が女性からの情報を感じ取り、具体的な距離を伝達
- 男女が同時に動作を開始
この一連の流れは、言葉ではなくコンタクトを通じて瞬時に行われます。一歩だけでではなく連続したステップで行われますし、ここに、スウェイや回転、シェイプなどの要素が加わることで、ダンスはさらに複雑になります。
効果的なリードとは?
リードを行う男性には、以下のポイントが重要です:
- 押したり引っ張ったりしない
- 自身の重心移動をコンタクトで伝達
- 女性の移動は女性に任せる
特に、女性の移動を直接コントロールしようとすると、かえってリードの妨げになる可能性があります。自然な動きを引き出すことが、スムーズなダンスにつながります。
フォローの自立性
フォローする女性には、次の点が求められます:
- フォローを能動的な動きとして捉える
- 男性の移動を察知して自ら動く
- シェイプを保ち、パートナーに頼らない
- 決して「ぶら下がる」ようなことはしない
フォローは単に「従う」のではなく、積極的に動きを作り出す重要な役割を担っています。また、相手に体重をかけると、男性の重心の移動の妨げになりリードを邪魔してしまいます。
コンタクトの強さと課題
コンタクトの強さは、多くの競技ダンサーを悩ませる問題の一つです。海外のトップ選手やコーチャーに踊ってもらった経験がありますが、トップ選手の間でも、踊りの特性や個人の好みによって、適切なコンタクトの強さは異なります。
一方で、ボディコンタクトを極端に弱くしたり、離れて踊るカップルも見られますが、これはリード&フォローの情報源を失うリスクがあります。ただし、怪我などの理由でパートナーへの負担を軽減する必要がある場合は例外となるでしょう。
ちなみに競技ダンスにおいて、手や腕のコンタクトの「強さ」と「重さ」は異なる概念です。「強い」コンタクトは明確な情報伝達を可能にする適度な圧力を指しますが、「重い」コンタクトはパートナーに過度に依存している状態を意味します。動きやシェイプの面でパートナーに頼りすぎると、それは「強い」のではなく「重い」コンタクトとなり、ダンスの質を低下させる可能性があります。
トップダンサーの苦悩(余談)
先日、練習場で日本のトップクラスのカップルを見かけましたが、「リードがわからない!」と悩む場面があります。これは、リード&フォローの奥深さを示す一例と言えるでしょう。
このような状況では、リードとフォロー、どちらに問題があるのかを特定することは難しく、カップル間の意見の相違や摩擦につながることもあります。
リード&フォローの向上のために
ここまでの説明で、リード&フォローの複雑さと奥深さについて理解が深まったことでしょう。しかし、実際のところ、この技術はそれほど難しく考える必要はありません。押したり引っ張ったり、ただ連れて行ってもらうだけの動きではないからです。リード&フォローの向上には、以下の重要なポイントに焦点を当てることが効果的です。
シャドウダンスの重要性
リード&フォローの基本を磨くには、まずシャドウで踊れることが最も重要です。シャドウダンスとは、パートナーなしで自分の動きを練習する方法です。
- シャドウで踊れない場合、相手に頼りすぎている可能性が高い
- 自立した動きができないと、リード&フォローの妨げになる
- 自分の動きに自信を持つことで、より効果的なリード&フォローが可能になる
シャドウでの練習を通じて、自分の動きを完全にコントロールできるようになることが、良好なリード&フォローの基礎となります。
シャドウ練習については以下の記事を参考にしてください。
シェイプの正確性
次に重要なのは、シェイプの正確性です。シェイプとは、ダンス中の体の形や姿勢のことを指します。
- シェイプの強さは男性のリードによって決められる
- しかし、女性が立てないようなシェイプでは、フォローが不可能
- 女性が安定して立てるシェイプを心がける
正確なシェイプは、パートナー間のバランスと安定性を保つ上で極めて重要です。これにより、スムーズなリード&フォローが可能になります。
シェイプの強さと決定権
「シェイプの強さは男性のリードで決める」という表現がありましたが、これは誤解を招く可能性があります。実際には:
- シェイプの強さを決めるのは「リード」の役割
- どのくらいリードするかはカップルで事前に話し合って決める
重要なのは、カップルとしての調和と、お互いの合意です。ダンスは二人で作り上げるものであり、一方が全てを決めるわけではありません。
あくまでダンスのリードは男性がするが、練習などで「もっとシェイプして」や「もう少しタイミング長くとろう」などリードするのはどちらでも問題ないです。筋力的な観点やスタンダードの踊りの特性を考慮すると、やはりダンスのリードは男性のほうがいいとは思っていますが。
まとめ
スタンダードのリード&フォローは、競技ダンスの中でも特に奥深い技術の一つです。初心者からトップダンサーまで、常に向上の余地があり、探求し続けることができる魅力的な分野です。
難しく考えすぎずに、パートナーとの協調を楽しみながら、一歩一歩技術を磨いていくことが、リード&フォローの真髄です。基本を大切にしながらも、新しい技術や考え方を柔軟に取り入れることで、より魅力的なダンスを創造することができるでしょう。この奥深い技術の探求を通じて、競技ダンスの世界でさらなる高みを目指してください。